岩手山(2038m) 2007/4/30

南部富士、岩手山は見る角度によって表情が違う。

南側からみた岩手山は平面的で物静か。

だがそれはわたしが知っている岩手山ではない。

わたしが知っている岩手山は雄々しく、厳しい。

北東の焼走り側からみる他を寄せ付けないその姿こそ、

わたしを目に見えず圧倒し続けた存在そのものに他ならない。

わたしは登山のあいだ中、はっきりとその存在を感じ取っていた。

それは、あるいは神かも知れなかった。


そして私たちが登った正に翌日、岩手山で遭難事故が起きた。

その日仲の良い夫婦がこの地で永久の眠りについた。

聞くところに寄れば、彼らは初心者ではない。

ご主人は学生時代から登山とスキーに親しみ、ここ数年は夫婦で百名山登頂を目指していたという。

ザイルを持っていたほどであるから、装備も怠ってはいなかったのだろう。

そんな彼らに一体なにが起きたのか?


それは、岩手山のみぞ知る。



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