早池峰山は心やさしい美女のような山だ。
その名の語感からも連想される美しい沢と緑豊かな森林帯。
密度の高い森林は風よけとなり、
その下に降り積もった雪は深くやわらかでいつまでも汚れない。
8合目あたりで森林限界をこえると、
こんどは雪の白にハイマツの緑、岩の銀が映える美しい雪原にかわる。
9合目をすぎると傾斜がつき岩も多くなってくるが、
それでもどこかにやわらかさを感じさせるから不思議である。
5合目の鳥居口の鐘を鳴らしてその向こうへくぐり抜けた登山者は、
きっといたずら好きな山の精の気配をすぐ側に感じることだろう。